子どものころの嫌いな野菜といえば、ピーマン・にんじん・しいたけetc.…
数えればきりがない。
栄養があるんだから、と親は何とか食べさせようとしてきたもんだけれど、
子どもの味覚的にまずいものはまずいのだと思ったものである。
我が家では冬のある時期になると、「すき焼き」が並ぶことがあった。
もちろん高級な牛肉なんて使ってない。
基本は豚肉で野菜や豆腐がたっぷり、タダでもらえる牛脂をうまく使い、
市販のすき焼きのたれを使ったいわゆる「すき焼き風」だ。
正直、子どものころの感覚としては「すき焼き」っぽいものが出たところで
嬉しかったかと聞かれれば、そうでもない。
だってこのすき焼き風にはあれが入っていた。
そう、春菊だ。
子ども心にこの春菊はくせものだった。
自分が食べられる豚肉や豆腐とかを中心に、器によそってもらうのだが
春菊の葉の部分がまぎれこんでくることがあった。
春菊の味は独特だ。苦いしクセがあるし香りが強い。(東京産は苦く、広島産は甘いらしい)
子どもの舌にはほんのちょっとの春菊でも食べられなかったのだ。
そして嫌いな食べ物リストに書き加えられたまま、嫌いなものをわざわざ食べる
必要性も感じないまま、私は大人になっていったのである――。
◇
◇
◇
いい大人になった私が再び春菊を口にすることになったのは、寒い冬の日だった。
その日、スーパーでたまたま春菊が安かった。
野菜もしばらくまともに食べてないし、ととりあえず買ったそれをゆでて
食べやすく切った。
ちょうど時刻はお昼どき。
寒い日の塩ラーメンは格別だ。そんなラーメンの付け合わせの一つに、
先ほどのゆでた春菊をそえてみた。
……ん? 春菊がうまい……だ、と!?
ただのゆでた春菊。ラーメンの付け合わせにのせただけなのに……。
世界観が変わるほどの衝撃だった。
苦いしクセがあるし香りがあるのに、なんともうまいのだ。
これが大人になったということか……(´~`)モグモグ
子どものころに苦手な食べ物があったとしても、
大人になればいつの間にか美味しくいただける――。
そんなことをしみじみ思ったある冬の日でした。
春菊が旬のうちに、今度は春菊を使った料理でも試してみようかな。